[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ホッホー、ホッホー
「………おや?鳥が………啼いているね………」
「あれは鳥ではございません―――それ」
と老人は千影の背後を指差す。
その先―――樹上には鳥にしては余りにも大きすぎるシルエットがあった。
それは梟のようでもあり、人が蹲っているようにも見えた。
目を凝らす。
千影の黝い瞳と、爛々と輝く夜啼鳥のそれと、三本の視線が交差する。
間違いなく其処には人が―――少なくとも人の姿をしたモノが―――千影を凝視しながら啼いていた。
その千影の様子に気が付いたのか。
「そこらからいつも抜け出してしまうようです」
と、老人は周囲の瘋癲醫院を指差して、
「遠くに行く訳でもなく、朝になれば帰って来るので、放っておいているようです」
「ふむ………」
千影は顎に手にやって、何やら思案していたようであるが。
「それにしても………」
と視線を夜啼鳥から外して言葉を続ける。
「………この道は………どこまで続いているのかな………」
先を見やれば蛇行しながら続く川と、それに沿って輝きを放つネオンサイン、それに照らされた桜の木々だけが視界にあり―――
いつまでも、どこまでも続いているように見えた。