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ネットで初めて例のフィギュアを見た時くらいに
http://www.amiami.com/shop/ProductInfo/product_id/67206
キレイに写真を撮りたいのですが、なかなか巧くいかないものですねえ。
デジカメの画面上でキレイに見えても「パシャッ」となった瞬間ぶれるんですよ(´д`*)
ちょっと加工して、見られるふいんきになりました。
で、一度買ってしまうと歯止めがきかなくなると言うか、勿論吟味に吟味を重ねるつもりではありますが
ヒマがあると面白いモノはないかと探してしまいますね。
今気になっているのは・・・トリガーハートエグゼリカです。
http://www.warashi.co.jp/exelica/information.htm
なんかデカイらしいです。
ちょっとこのフィギュアについては暫く追いかけたいと思います。
思えば………道に迷い始めた時から、既に術に掛けられたのかもしれない。
「あの幻術師(イリュージョニスト)………名前を聞いておけば良かったな………」
と夢うつつの中で千影が思い付いた時。
「千影ちゃん、今日は随分お寝坊さんなのね?」
「おねぼうさんなのね、ねえたま?」
姉と妹の声―――千影はベッドの下で目を醒ました。
「第二話」
「また夜更かししていたの?」
「ああ………どうも夢中になる性分でね………」
あれから無事に夜が明けた。
ちょっとした助けが来たお陰で朝には帰宅する事が出来た。
「持つべきものは愛すべき妹………だけど眠いな………」
「千影ちゃん、何か言った?」
「いや………なんでも………」
*
千影は椅子の背凭れに身を預け、姉、可憐が髪を梳くのに任せている。
朝日は千影の魔女の刻印を映し出さない―――黒髪を可憐に預けるのはいい気分だった。
妹、雛子は千影の膝の上で、歌を歌っている。
「何だか具合が良くないようね………朝ごはんは食べられる?」
「ああ………大丈夫………それに、起こして貰うよう頼んだのは………この私だからね」
「あと、やっぱりベッドは寝辛い?いつも転げ落ちているみたいだけど」
「まあ………その内慣れると思うよ………」
まさか棺桶の方が落ち着くとは言い辛い。
そう言えばあの棺桶―――物心付いた時から千影の寝床であり、隠れ家であった―――は暫く使っていない………何処に置いただろうか。
しかし、何故だろう。眠いのは分かるが―――何か胸の辺りがむかむかする。
「それにしても………千影ちゃん?」
髪を梳かしながら可憐が耳打ちする。
「何だい………姉さん?」
「昨晩は一体何処に行っていたの?」
「………………………………」
「千影ちゃん?」
「い………一体………何を言っているのかな………」
夕食の時には家族全員が集まる事になっている。だが昨晩は帰れるか分からなかった為、魔道具によって生み出される分身、『影』を置いて来た。千影と『影』は、記憶の共有を行う事が出来る。
「千影ちゃん、とぼけてもダメよ?じゃあ昨日の夕ごはんを覚えている?」
帰宅してからすぐ、昨晩の出来事に関して家族との間で齟齬が生じないように、『共有』を行ってからベッドに沈み込んだのは正解だった………
「勿論………しゃぶしゃぶは兄くんの次に好きだという事………可憐も知っているだろう?」
「そうね、でも、千影ちゃん、昨日皆が止めているのに、お肉を生のまま食べていたわよ」
「なにい………いや、何でもない、その………」
この胸のむかつきはそう言う事か………『影』の行動を単調にし過ぎている所為だ。ともかく言葉を続けた。
「はは………生肉は可憐の次くらいには好物………だよ」
「ねえねえ、ヒナはぁ?」
と膝の上の雛子。
「雛子はしゃぶしゃぶと同着………二位だよ」
「わあ、よかったぁ。ヒナ、にばん~」
「おっと………紅茶がこぼれるよ………」
「それで、白雪ちゃんのケーキは何番目くらい?喜んでいたわよ?今日も千影ちゃんの為に腕によりを掛けてスイーツを作るんだって、朝早くから厨房に篭りっぱなしよ」
「白雪の………ケーキ?」
肩越しに振り返り後ろを見る―――可憐が首を縦に振る。
向き直り雛子と目を合わせる―――やはり首を縦に振る。
「きのうの白雪ちゃんのケーキ、すごかったよね?ねえたま………一人で食べちゃうんだもん………おいしかった?おさかなさん」
ケーキ?魚?記憶を辿る―――まだ図示されていないビジョン。
「う………」
千影は―――視た。
何か巨大な魚の頭が毒々しい色の装飾をされて、これまた禍々しい彩りの土台であるケーキの上に鎮座ましましており、一言で言えば―――邪神降臨と言った風情だ。
「私が………食べた?」
肩越しに振り返り後ろを見る―――可憐が首を縦に振る。
向き直り雛子と目を合わせる―――やはり首を縦に振る。
次の瞬間、千影は口に含んでいた紅茶を垂れ流していた。抱えていた雛子の頭上へ。
「やだあ………ねえたま、もう、お着替えしたばっかりなのに………ぐす」
べそをかき始めた雛子。
「あ………済まない………可憐………悪いが、お小言は後で………あと髪も後で………まずお風呂にする………雛子、行こうか………」
膝の上から雛子を降ろしながら言った。
「え?ねえたまとおふろ?」
「ああ………そうだよ………」
髪を撫でる―――砂糖がたっぷり入った紅茶でべたべただ。
「わーいわーい、ヒナ、ひよこさん取って来るね!」
途端に泣き止んだ雛子は、自室に走って行った。
*
「しかし………凄いね、姉さん………あの『影』は兄くんでも見破れないのに………」
「だって千影ちゃん、嘘をつく時、私の事、『可憐』って呼ぶでしょう?昔からね、千影ちゃん………壁を作る時、そうしていたのよ?」
可憐が微笑んだ。
「そう………か」
「それに………」
「それに?」
「昨日の千影ちゃん、眼帯をしていなかったわ」今分かる事と言えば。
躯が動かない。
声は出るようだ。
背凭れの深い椅子に座っている。
甘い紅茶の香りが漂っている。
「………成程………危機一髪………と言う訳だね………」
「なあに。痛みは感じさせません。怖れや痛みを与える事は私の本意ではありませぬ故」
「………………………」
千影の無言に促される形になったか、老人が続ける。
「つまり………これから貴女の眼を刳り貫き硝子玉を入れ、内臓を捌いて綿を詰めます―――貴女は私の元で永遠に美しい人形になるのです。そして、それには苦痛や恐怖は不要です。作品の貌が―――崩れますからな。時にはそう言った物を喜ばれる御仁もいらっしゃるようですが私の作品は恍惚とした甘美な微笑みを湛えた少女人形―――あなたはそう成るに相応しい」
「………それは………光栄だね………」
千影の皮肉をどう受け取ったか、老人は懐から赤い玉を取り出して言った。
「私はこの―――血紅色の玉を入れるに相応しい素体を求めて夜の町を彷徨っておりました。そして、私は初めて出逢ったその時からずっと思っていたのです―――貴女にその黝い瞳は似合わない。この二つの出逢いが運命で無くて何でありましょう」
千影は肯いた―――肯けていただろうか。
「ならば………一つだけお願いがあるんだ」
「何でしょう―――可能な限りお応え致します」
「左の眼を………先に………してくれないかな………」
「―――畏まりました」
恭しく一礼した。
*
「なあに心配はございません。私もそれなりに医術の心得がございます―――そのお躯に瑕一つ付けず、完成させて御覧に入れましょう」
白い手袋を嵌めた老人の手が、眼帯に掛かる、とその時。
千影の左眼から飛び出した影が―――闇より黒い、虹より眩しい色彩が一瞬のうちに老人を飲み込んでいた。
その一瞬の後、影は再び千影の左眼に消えた。
「だから………そこいらの医者の手に負えるものではない、と………言ったのにね………フフフ」
千影はほんの、ほんの少しだけ口唇の端を吊り上げて微笑する。
「しかし………見事な使い手だった………また逢えるかも………しれないね………」
躯はまだ動かない。
動けるまでに後どの位掛かるだろう。
だが―――良いではないか。
再び躯に自由が戻るまで、こうして月明かりの中で夜空を見ているのも悪くない。
どの道迷っていたのだから―――もう少しくらい遅くなっても。
「ああ、全く………全く悪く無いのだけれど………惜しむらくは………こうして身動きの取れぬ私の躯を玩んでくれるキミが………居ない事だ………兄くん」
第一話 完